時間割は自分で作る?次期学習指導要領の改訂に向けて

次の学習指導要領の改訂に向けて、教育課程の柔軟な運用に関する議論が進められています。
そうした中で、子ども一人ひとりの学ぶスピードに合わせて、自ら授業の時間割を組み立てる取り組みを行う学校も現れています。
今回は、名古屋市にある小学校の実践例をご紹介します。
(※2025年4月28日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
名古屋の小学校での実践例-時間割を自分でデザインする「学び」
名古屋市立山吹小学校では、児童が自ら学習計画を立て、主体的に学ぶ取り組みが行われています。
昨年12月に訪れた際、5年生の教室では、ある児童が自分で作成した「週計画表」の振り返りを記入していました。
「計画を手遅れになる前に見直すことができた」など、30項目以上ある振り返りの視点から該当するものを選び、具体的に文章で記録していました。
この学校では、2020年度から、児童一人ひとりが1週間の学習スケジュールを組み立てる方法を導入しています。
国語や算数、理科、社会といった各教科の単元計画は教員が提示しますが、それをもとに子どもたちは「山吹セレクトタイム(YST)」と呼ばれる時間を使って、自分自身の学びの順序を決めていきます。
一部の授業を除き、どの教科を何時間目に取り組むかは、子どもが選ぶことができます。
担任は、児童が立てた計画や学習時間を確認し、必要に応じてアドバイスを行います。
また、学習スタイルも自由に選べるのが特徴です。
複数人で机を囲んで学ぶグループもいれば、窓際で一緒に話し合う児童、一人で集中して課題に取り組む児童もいます。
ノートを使って学習を進める子もいれば、タブレット端末を活用して学んでいる子もおり、それぞれに合った方法で取り組んでいます。
今どきの自由進度-子どもが自ら学びに向き合う教室づくり
名古屋市立山吹小学校では、2030年を見据えた教育のあり方として、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の両立をめざし、2021年度より主に3年生以上を対象に、児童自身が学習を調整できるスタイルを本格的に導入しました。
ある教室では、黒板に国語・算数・理科・社会それぞれの「学習の進み具合」を示す表が貼られ、児童が自分のペースで取り組んでいます。科の単元「ふりこの性質」では、「ふりこの1往復の時間は何によって変化するのかを実験で確かめよう」というゴールが示され、6時間分の学習のねらいが整理されています。どもたちはこの表を参考に、学習計画を立てています。
教室の中央では、男の子2人が実際にふりこの動きを観察しながら実験を行っており、別の場所では国語の課題について意見を交わしているグループも見られました。
社会科のまとめを見せ合う姿や、ドリルに取り組む子、タブレットを使って学習を進める子もいて、学び方は多様です。
新しく配属された若手の教員は、「このような授業は初めて見ました。子どもたちが本当に楽しそうに学んでいて驚きました」と話します。
「指示されて学ぶのではなく、自ら考えて動いている印象を受けます。一斉授業よりも子どもとの対話の時間が増え、それぞれの理解度も把握しやすいです」とも述べていました。
子どもたちは学習内容を友達と共有したり、学級全体で発表したりしながら、知識を深め合っています。
こうした協働的な学びを通じて、表面的な理解にとどまらず、思考を深めることができます。
一方で、一部の保護者からは「子どもが自分で進められていないように感じる」「このやり方で学力に影響は出ないのか」といった不安の声も寄せられているそうです。
これに対して、校長の傳佐由希子先生は、「この取り組みのねらいや意義を、教職員全体でしっかりと共有することが重要です」と語ります。
また、「子どもたちの背景や将来の目標はさまざまです。すでに学年の内容を理解している子もいれば、不登校を経験している子もいます。
一斉指導だけでは対応しきれない部分があり、それぞれに合った学び方を身につけることが今後ますます必要になります」と強調します。
こうした「自由進度学習」は、実は約40年前から一部の教員や学校で試みられてきた手法です。
しかし、2021年に出された中央教育審議会の答申「令和の日本型学校教育」が大きな後押しとなり、現在では石川県加賀市をはじめ、全国各地に少しずつ広まりつつあります。
子どもの未来を支える「自己調整力」を育む学びへ
一方で、こうした学びのスタイルを実現するには、「教員による丁寧な準備と適切な支援がなければ、子どもが深い理解に到達するのは難しい」といった指摘もあります。
子どもの主体的な学びについて研究している上智大学の奈須正裕教授は、
「山吹小学校のような取り組みは、ヨーロッパではそれほど珍しいものではありません。これからの時代を生きる子どもたちには、自ら学びを調整していく力、すなわち“自己調整力”が必要です。次期学習指導要領で検討されている教育課程の柔軟化は、こうした動きをさらに推進するものになると期待しています」
と話しています。
また、文部科学省は今月、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させるための取り組みをサポートする目的で、オンラインで利用できる支援コンテンツ「みるみる」を公開しました。
この中には、実際の授業の様子を映した動画や具体的な指導案などが含まれており、授業イメージが持ちにくいという現場の声に応える形となっています。
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