子ども心のトラウマ「治療できるよ」伝え続ける

こども家庭庁は、全国の児童相談所における「トラウマ(心的外傷)ケア」の実施状況について初めて調査を行い、今春にその結果をまとめた報告書を公表しました。
そこで、虐待などの経験により心に傷を抱えた子どもたちへの支援のあり方について、兵庫県こころのケアセンター(神戸市)の副センター長で精神科医の亀岡智美氏に話を伺いました。
(※2025年10月21日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
子どものトラウマ、回復への支援は重要
人は誰でも人生の中で何度か心に傷を負う経験をするといわれており、日本ではおよそ6割の人がトラウマを経験しているという調査結果もあります。
比較的軽い心の傷であれば、時間の経過とともに回復していく場合が多く、衣食住が安定し、安心できる人間関係の中で過ごすことで自然に状態が改善していく子どもも少なくありません。
しかし、回復が難しいケースも存在します。
特に児童福祉施設などで社会的養護を受けている子どもは、虐待や不適切な養育環境など、複数のトラウマやそれに関連する逆境的な体験を重ねていることが多く、深い心の傷を抱えている場合があります。
適切な支援が行われないまま成長すると、自暴自棄な状態のまま社会生活を送らざるを得なくなる可能性もあります。
大きなつらい出来事を経験しながらも、それを1人で抱え込んで生きていく状況は非常に過酷であり、結果として心の傷がさらに深まるおそれがあります。
今回の実態調査では、全国の児童相談所を対象に、トラウマへの理解や評価、安全で安心できる環境づくりといった「トラウマインフォームドケア」、症状に関する心理教育やリラクセーションなどの「トラウマに配慮したケア」、さらに「トラウマに特化したケア」の実施状況が確認されました。
この調査を通じて、心の傷への対応の重要性がようやく重視され始めているといえます。
報告書によると、児童心理司が関わった子どものうち、トラウマの観点から評価が行われた割合は「~2割程度」が最も多く約26%、次いで「5~6割程度」が約23%でした。
また、十分なアセスメントが実施されている割合は、「一時保護中」で約26%、「施設入所中」で約11%、「里親委託中」で約8%という結果となっており、支援体制の充実が今後の課題として示されています。
社会的養護の子どもに必要なトラウマへの理解と継続的な支援
社会的養護のもとで生活する子どもたちは、心に傷を抱えている可能性が高いことを前提に関わる姿勢が求められます。
特にPTSD(心的外傷後ストレス症)を見逃さないためには、丁寧なアセスメントを行い、適切なケアや治療へと確実につなげていくことが重要です。
虐待を経験した子どものうち、およそ3~4人に1人にPTSDの症状がみられるというデータもあります。
しかし、PTSDは外見だけでは判断しにくく、周囲が気づきにくい特徴があります。
児童相談所で一時保護された際も、すべての子どもが自分のつらさを言葉で表現できるわけではありません。
「大丈夫」「特に問題はない」と話していても、継続的に丁寧な関わりを続けることで、後になって心の状態が明らかになることもあります。
中には「もう平気」「つらいことはない」と強く否定する子どももいますが、それでも支援者が「ケアや治療を受けることができる」と伝え続けることが大切です。
進学や就職など、社会に出る節目を迎える頃になってから、「施設にいる間に治療を受けたい」と自ら希望するようになるケースもあります。
信頼できる大人や安心できる支援環境の中で、その子どもに合った方法でこれまでの経験や生い立ちを整理していくことは非常に意義があります。
こうした積み重ねにより、自分の人生を主体的に歩んでいく力を少しずつ取り戻していくことが期待されます。
ただし、社会生活を送るだけでも大きな負担がある中で、子どもが1人で過去を振り返り整理することは容易ではなく、継続的な支援の必要性が指摘されています。
地域格差をなくす!トラウマケア体制の整備
児童養護施設などで社会的養護を受けた経験のある人への調査では、「自分の話を丁寧に聞いてもらえた」という肯定的な声がある一方で、「少なくとも月に1回は様子を見に来てほしい」といった支援の継続を求める意見も寄せられています。
しかし、すべての自治体や児童相談所が十分な予算や人員を確保できているわけではありません。
そのため、1つの機関だけで対応が難しい場合には、関係機関同士が連携し、どの地域に住んでいても適切なケアを受けられる仕組みづくりが必要とされています。
子どもの立場から見れば、居住地域によって受けられる支援の質に差が生じる状況は望ましいものではありません。
また、実態調査の報告書では、トラウマケアの基本的な考え方を組織として学び共有することが、児童相談所や施設で働く職員への支援にもつながると指摘されています。
日々、困難な状況にある子どもと向き合いながらも、成果や達成感を実感しにくい環境で働いている職員は少なくありません。
こうした現場を支えるためにも、効果が確認された取り組みを国や自治体が適切に評価し、制度として整備していくことが求められています。
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